情報基礎English教材の制作

 

入口紀男、中野裕司、杉谷賢一、武蔵泰雄、喜多敏博、北村士郎、右田雅裕、松葉龍一

 

 

 

情報基礎は全学部全学科一年生の必修科目である。Englishを母国語とする学生や帰国学生、編入生や他大学から大学院進学者、さらに外国人特別選抜枠入学者へのEnglish教材の作成を行った。

 

 

Fig. 1  学期間の履修内容を予告する「マニフェスト」ページの一つ。

 

 

 English教材は、単に日本語の教材をEnglishに直訳したり、英語のニュアンスに配慮して翻訳したりすることで制作できるものでない。Englishの世界の教育文化は、日本の教育文化とは全く異なっているからである。

旧約聖書の創造神の前には、地上のすべてのものは相対的でしかなく、その相対化の徹底がもたらすものは「契約」しかない。契約の世界には「もののあはれ」も「記紀万葉の心」も存在しないのである。したがって、English教材は、それ自体が大学と学生との間で交わされる「契約書」となる性質をもっている。

したがって、English教材を用いる場合には、学び始める以前に、まず大学が何を教え、学生が何を学ぶかの合意ができた上で学生は学び始めることになる。English教材では、少なくともそのような合意をするかしないかを学生が自由意志によって決める機会が、合理的な一定期間とともに与えられる。学生がその機会を与えられた上で学習して成績を上げることは「契約」を履行したことになり、逆に学習しないことは「契約」に違反したことになる。そのようにして、契約の世界では、学生の最終の成績は「契約履行の成果」として評価される性質をもっている。そのことは個々の学生にとっても非常にわかりやすく、欧米の契約文化の爽快な一面である。また、そこのところが教員から与えられたものをそのまま学ぶという従来の日本の教育文化とは根本的に異なっている。

たとえば、Fig. 1 は学期間の履修内容を予告するページの一つである。これも契約書であり、あるいは欧米では「マニフェスト」の一部となる性質をもっている。したがって、English教材は、合理的な反対理由が無い限り、すべてが学生に何週間も前から開示されていく。学生は、それに対してその内容は学習すべきでないという合理的理由がある場合は、そのことを申し立てる機会が合理的な期間とともに与えられてゆく

これによって、欧米社会で通用する熊本大学の情報基礎教育が本年度より確立しつつある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Fig. 2  日本語教材からのEnglishページへのリンク。

 

 

一方、熊本大学の情報基礎教育は、教員から与えられたものをそのまま学ぶという従来の日本の教育文化の中で行われてきた。English教材では、作成される日本語の教材に対して、内容と達成のレベルにおいて、少なくとも互角であることが保証されなければならない。したがって、English教材はその両方(欧米の契約の学習文化と、日本の与えられたものをそのまま学ぶという学習文化)を満たすように作成された。

この英語コンテンツの提供により、これまで学部1年次での情報基礎教育を受けずに、教育研究活動を開始していた留学生等についても、日本人学生同様に情報リテラシー教育を行う環境が整いつつある。

 

 

Fig. 3  Englishで制作された毎週の「Quiz」の一例。学生には毎週数問〜十数問課せられる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Fig. 4  English教材の毎週の「Quiz」に対応する日本語の「確認テスト」。

 

 

 

本年度は、大学院生を中心に外国人留学生への情報基礎教育を試験的に実施し、大学院留学生等についても大学として共通情報基礎教育を実施できた。すなわち、海外からの大学院留学生も、ワードプロセッサ、表計算、プレゼンテーションファイルの制作、Emailの設定、ホームページの開設等をEnglishで履修できた。