期末試験としてのオンライン一斉テスト


メディア情報処理研究部門
右田 雅裕
migita@cc.kumamoto-u.ac.jp

1 情報処理概論の期末試験概要

熊本大学総合情報基盤センターでは,「情報処理概論」を平成16年度より対面 講義が行われないe-Learning科目として開講している. 同科目は本学2年生の約2/3(約1100名)を対象にした必修の科目である. LMS(Learning Management System)にWebCTが採用され,期末試験に関しても これを用いたオンラインテストとして実施されている. この期末試験は,WebCTを用いたオンライン一斉テストとして平成16年度と 17年度の2年にわたり,大きな問題もなく実施されてきた.

本稿では,不正行為等を防止の上で,LMSを用いて平成17年度情報処理概論の 期末試験として実施されたオンライン一斉テストについて紹介する.

2 オンラインテスト形式期末試験

2.1 試験の実施体制

情報処理概論の期末試験は,大学教育機能開発総合研究センターに設けられた 6教室のPC実習室において行われた. これらの実習室に設置されたPCと通常の講義に利用されるWebCTとを用いて, 本試験はオンラインテストとして実施された. 試験時には,各PC実習室に試験監督が複数名配置されており,通常の定期試験と 同様に不正行為を防止するような体制が整えられた.

PC実習室定員の制約から,期末試験は月曜開講クラスで3回,金曜開講クラスで 1回と合計4回が実施された. 各受講者は所属ごとに試験の日時と教室が指定されており,指定された日時 及びPC実習室に集合して受験した. 受講者は試験専用IDで実習室PCにログオンした上で,さらに学内LAN上のWebCTに ログインし,同システム上の情報処理概論ホームページより,WebCTのテストとして 用意された期末試験に同時に取り組む. この試験の手順及び注意事項は,事前に試験日程等とともに受講者に 通知されており,試験時にも参照することができる. 1回の試験では,最大約300名の受講者がWebCTへ一斉にログインして試験を 受験したが,その際受講者の入力に対してWebCT側の応答が著しく遅くなる というような現象は確認できなかった.

2.2 試験方式

情報処理概論では,前述のPC実習室定員の制約から受講者を複数の試験日に 分けて試験を実施する必要があることから,試験日による受講者間の差を 少なくする必要があった. そこで,情報処理概論の期末試験では,受講者の各受験毎に試験問題を 問題データベースよりランダムに出題する方式が採用された. これは通常の講義に相当し期末試験前まで毎週実施される理解度の確認問題と 同様の方式である. ただし,問題の偏りを少なくするとともにより広い範囲から出題するために, 期末試験では各週の学習テーマごとに規定数の問題が出題されるように 設定されている.これにより,受講者の各受験毎に各々の学習テーマ内で 規定数の問題がバランスよくランダムに出題される.

出題数は合計50問であるが,本試験ではランダムに出題されるという性質も 考慮して,各試験時間内であれば何回でも受験可能とした. (試験時間内に)複数回受験した場合には,最高点を記録した受験が評価対象 として採用される. そのため,受講者が問題に著しく偏りがあると判断した場合には,受験中の その答案を提出することで,(試験時間内であれば)新たな問題で構成された 答案に取り組むこともできる. このように(試験時間内の)複数回受験を認めているため,障害発生時には 受講者を移動させて端末を変更するといった柔軟な対応も可能である.

2.3 試験時間

本学の講義時間は通常90分間であるが,試験時間は70分間とした. 本試験はオンラインテスト形式の試験であるため,受講者はWebCTにログイン しなければ期末試験の問題さえ見ることができず,試験開始前のログイン完了が 必要である. そこで,始業後の15分間は試験の注意事項を確認する時間とし,緩衝時間を 設けた.また,これにより障害の発生にも柔軟に対応できるようにしている. 一方,試験終了時には受講者がPCを一斉にシャットダウンすることから, この処理による実習室サーバシステムへの負荷の大幅な上昇が予想された. そこで,次時限の講義への影響を最小限にするため終業5分前には試験終了 とした.

2.4 試験専用IDによる制限

本試験では通常の定期試験と同様に不正行為を禁じており,これを防止する ために試験専用の共通IDを用意した.

各受講者の通常IDに対して,試験専用IDではプログラムやファイルに関する PCの操作に制限が設けられている. また,ネットワーク利用に関しても試験を実施するWebCTへの接続だけに 限定されており,このIDにより試験に必要なPCの操作のみ提供する. 受講者が試験を受ける際には,この試験専用IDでPCにログオンすることが 試験手順として事前に通知されており,受講者が誤って通常IDを用いた場合でも, 図1のように試験を受験できないような制限を設けている.


期末試験(テスト)のアクセス制御
図1 期末試験(テスト)のアクセス制御

2.5 受講者の確認

本試験はオンラインテスト形式の試験であることや,試験日が分散しており 数回にわたって試験が実施されることを考慮して,試験監督による受講者の 確認を実施している.

具体的には,まずPCを操作し受験中の受講者と学生証の写真を照合する. 次に,学生証とWebCTにログインしている受講者との氏名を照合する. WebCTにログイン中の受講者氏名については,受験中のテスト・ウィンドウ最 上部に表示されるため,受講者確認の際は表示箇所を提示することが事前に通 知されている. このように,2段階の方法で試験中の受講者確認を行った.