家本教授からは 「e-learningのイノベーションの展開」というタイトル で,広い知見をもとに,教育は科学であるという観点から, 今後の日本の教育体制改革について講演があった.
戸田氏は 「研修サービス提供企業における品質管理事例」というタイトルで, 戸田氏ご本人の職場の実例を交えた企業で展開される研修サービス 事業における学習コンテンツの品質管理から教育効果の品質評価 まで,幅広い内容の講演であった. 株式会社富士通ラーニングメディアの主な事業は BtoBのビジネスモデルによる研修サービス事業で, 主に集合教育による研修が行われており, eラーニングによる研修も行われている. 今回は品質管理という視点で,研修コンテンツの品質チェックリストや フィードバックによるコース開発段階での品質管理, および受講者からのデータ収集とフィードバックによる コース提供時の品質管理について詳細な話があった. ビジネスとして成り立たせるために サービスの品質に重きが置いてあり, 受講者はじめ,その会社の人事部や上司といった幅広い クライアントに対してサービスの品質評価を行い, その品質管理が行われている点をあげ, 企業の特徴的な面についても解説があった.
「大学eラーニングの課題 —ブレークスルーの条件— 」 というタイトルで,これまでの日本の教育体制にはじまり, 様々な手法による世界的な遠隔教育の取り組みから, インターネットによる遠隔教育を取り上げ, 日本の教育体制をあらためて評価することで, eラーニングを軸にした今後の日本の教育体制について 講演があった. 講演の中では様々なアンケート結果の紹介とともに, 教育に対する組織的取り組みと教員個人の教育に対する認識との 因果関係について解説があった. 今後のLMSの運用を考える上で非常に参考になる内容であった.
「ICTで学習を継続するための方略」というタイトルで, 学習の継続性の問題をメインテーマに講演が行われた. 講演では, ドロップアウトについてコメントがあり, 通常の対面式の講義を行う大学に比べて, インターネットを利用した非対面式の講義の場合には 学生がドロップアウトする割合が多いとの解説があった. また,同様に,時間と労力,動機付け,孤独感,学習効果, 教育的意義,生涯学習といったeラーニングのもつ課題について 解説があった.
赤堀先生の研究テーマである アフォーダンス,プレゼンス,スキーマについて, 実際の研究結果をもとに解説があった. アフォーダンスでは,勉強したくなるITを考える必要が あるとの話が印象的であった. プレゼンスに関しては, 視線の交わりによるプレゼンスが学習の継続性の要因となるとの 実験結果をもとに話が進められ, 教材へどのように他人が関わるか,先生の存在感がいかに 重要であるか話があった. また,このプレゼンスをいかにITで実現するかが 今後のeラーニングのポイントとなるとの話があった. アフォーダンス,プレゼンス,スキーマについて 関心を深める良い機会となった.
講演の後半には,手書き,特に下線や注釈の効果に関する 研究の紹介もあり,Web上であっても手書きによる下線や注釈 の効果の解説があった. 改めて,赤堀先生の造詣の深さ,教育に対する その研究姿勢に圧倒された.