熊本大学GP国際シンポジウム2007及び熊本大学GP国際ワークショップ2007
平成16年度に採択された特色GP「学習と社会に扉を開く全学共通情報基礎教育」の最終年度の事業として,平成19年7月9日に「熊本大学GP国際シンポジウム2007」を,平成19年度12月18日に「熊本大学GP国際ワークショップ」を開催しました。シンポジウムは,教育におけるIT化を全学展開するために国内外での先進的な取り組みを紹介し,今後の展開に資することを目的に,学内外に参加を呼びかけました。一方,ワークショップは,eラーニングに関する研究教育に従事する研究者を招聘し,今後のeラーニングのあり方について,主として専門家を対象とした議論を行いました。
平成16年以降の特色GP活動全体については,WEBページをあわせて参照いただくと,本稿で平成19年度に開催したGP国際シンポジウムならびに国際ワークショップの項を再掲します。
http://www.gp.kumamoto-u.ac.jp
平成19年7月9日 13時00分―16時30分
熊本大学工学部百周年記念館
近年、大学教育における IT
環境の整備と、e
ラーニングシステム環境下での教育コンテンツのデジタル化、オンライン化が急速に進んできている。
熊本大学では、教育における IT
化を広い意味でのeラーニングととらえ、システム環境の整備だけでなく、全学情報教育の実施による学生の
IT
技術の習得、LMS
利用の全学展開、教育内容の質的な保証、高品質な
e
ラーニングを開発するための教授システム学専攻の開設等に取り組んできた。
本シンポジウムでは、“A
strategy for spreading IT based education over the university (教育における
IT
化の全学展開に向けた戦略)”と題して、教育の
IT
利用を積極的に進めておられる4人の先生を国内外からお招きし、欧州と日本国内の大学における取り組みをご紹介いただいた。また、パネルディスカッション
を通して活発な議論を行ない、今後の熊本大学における e
ラーニングの全学利用を促進させるための方略、計画立案を行う上で示唆に富む多くの情報を得ることができた。
ボルドー第
1
大学 Zimmer
先生により提供された、“Virtual
Models of European Universities”に関するレポートに基づいた、「EU
圏の大学では、ICT
と e
ラーニング活用度は 4
段階に分けられ、さらに、各国内においても、より積極的な活用を行おうとしている大学とそうでない大学とで意識に大きな隔たりがある」、との話題は各パネ
リスト、参加者にとって非常に興味深いものであり、大変活発な議論を呼ぶことになった。
また、ローザンヌ工科大学
(EPFL)
Gillet 先生による EPFL
における e
ラーニングを活用した教育実践、EPFL
Learning Center の活動に関する話題提供は、本学が今後の指標とすべき多くの事項を含むものだった。
国内における
e
ラーニングを活用した教育の先駆者的存在である大阪大学と名古屋大学よりお招きした、竹村、梶田両先生からは、e
ラーニングを活用した教育実践と、それを実践するための情報システム連携に関する話題提供があり、竹村先生の提示された、e
ラーニングの成功のためには、「e
ラーニングに関するすべてのことを一括して請け負う組織が必ず必要である」との意見は、本学の関係者一同と全く意見を同じくするものであり、本学がすすめ
ている e
ラーニング推進のための方向性を再確認することができた。
また、本学においても次期システムの候補の一つとして導入を検討している
SAKAI
システムに関する日本の第一人者である梶田先生のお話は今後のシステム検討において有用かつ、大変参考になるものだった。
さらに、e
ラーニングを高等教育機関で活用されている学内外の参加者と多岐にわたる意見、情報を交換を行い議論する場を持てたことも今回の国際シンポジウムの成果の一つであると考えている。
|
|
大阪大学 サイバーメディアセンター
|
|
|
|
会場の様子 |
平成19年12月18日 9時00分―17時35分
熊本大学工学部百周年記念館
フィンランド、スロバキア、インドネシア、日本において、eラーニングを活用した教育、研究を精力的にすすめ
られている先生方をお招きし、各国、各大学におけるeラーニング活用の現状をお話しいただいた。講演者ならびに出席者の間で、高等教育の未来像や次世代の
学習環境などについて議論、意見交換をし、密度の濃い討論を行なうことができ、今後のeラーニングのあり方について、多面的多角的に議論を深めることがで
きた。本ワークショップでの使用言語は、すべて英語であり、同時通訳も提供していないため、eラーニングに造詣の深い教員・職員や関係分野の研究を行っている大学院生が中心のワークショップであった。このため、密度の濃い議論は、通訳を介することのもどかしさもなく進めることができた。本ワーク
ショップは、9時30分から昼食や短時間の休憩を挟み17時35分まで、4部構成で開催した。
第一部は、「インドネシアにおける
ICT教育の現状」と題して、スラバヤ工科大学・元副学長であり、インドネシア政府情報通信大臣アドバイザーを勤める
Achmad
Jazidie 先生が、大学としてのeラーニングの取り組みから、インドネシアの学術情報ネットワーク
INHERENT
、さらには情報通信政策におけるeラーニングの位置づけについて、政策立案等の立場から講演いただだいた。引き続き、スラバヤ工科大学・ICTセンター長
の Achmad
Affandi 先生に、スラバヤ工科大学内でのeラーニング支援組織や
SHARE-ITS
と呼ばれる公開eラーニングシステムの運用等を交え、ご講演いただいた。
[コーディネーター:宇佐川
毅]
第二部は、昼食後に「北欧及び東欧におけるeラーニング」と題して、スロバキア・コシツエ工科大学
Ladislav
Samuelis 先生、フィンランド・ヘルシンキ
工科大学 Hallantie
Heikki Juhani 先生にご講演いただいた。
Ladislav
Samuelis
先生は、プラハ工科大学で修士号、ブタペスト工科大学でPhDを取得され、コシツエ工科大学で情報科学に関する教鞭をとる傍ら、EUの様々なeラーニング
に関する国際プロジェクトで活動されるといった国際的な経歴をお持ちで、本講演では、特にスロバキアと東欧におけるeラーニングの現状と将来像に関してご
講演いただいた。
ヘルシンキ
工科大学 Hallantie
Heikki Juhani
先生は、ヘルシンキ大学で修士号取得後、多くの情報系企業や政府機関でマネージメントと管理職を歴任され、その間も大学での生涯学習に参加し、現在はヘル
シンキ工科大学の生涯学習プロジェクトの管理・運営、eラーニング活用に関する研究、いくつかの国際プロジェクトの中心的役割を担っておられ、本講演で
は、フィンランド、北欧におけるeラーニングの現状と将来像をご講演いただいた。 [コーディネーター:中野
裕司]
第三部は、「日本におけるeラーニング活動」と題して日本を代表する取り組みを、広島大学
安武 公一先生、メディア教育開発センター 仲林
清先生にご講演いただいた。安武先生は、ご自身が広島大学において実践されている
ICTやeラーニングを活用した授業をご紹介いただき、ICTとりわけ、BBS等を活用した学生間の協調学習が学生の理解を促させ、さらには学生の受講満
足度の向上にもつながるなどを数値データを用いて示された。ICTを活用した協調学習の有用性を再認識すると共に、本学における今後のeラーニング実践の
一つの方策を参加者は得ることができたのではないかと考える。仲林先生は、科学技術の利用における標準化の重要性を示され、先生ご自身が中心メンバーの一
員となって精力的に進められているeラーニングの標準化SCORMに関する様々な興味深いご講演をいただいた。今後の学習教材の流用や共用、より高品質な
内容をもつ学習教材を学習者へ提供していくために、SCORMの重要性を改めて認識することができ、本学がめざすeラーニング戦略におけるSCORM対応
の重要度と、その急務さを実感できた。
[コーディネーター:松葉
龍一]
第四部は、「将来に向けてのeラーニング」と題してパネルディスカッションと、ご講演いただいた6名の先生方を囲んで、フロアーとの意見交換の
場を持った。冒頭で、フロアーの聴衆およびパネリストの先生方それぞれに1枚のシートを配り、そこに書いてある「さらに身近に」「さらにインテリジェント
に」「ストレスの少ないものに」「より国際的・文化横断的に」などのeラーニングの将来像のキーワードについて、どの項目が重要と考えるかをそれぞれの立
場から意見が交わされた。それぞれの経験や専門性に基づいた、世界的なeラーニングの将来像を描くさまざまな示唆が得られた。
[司会:喜多
敏博]
|
|
|
ヘルシンキ 工科大学 |
広島大学 |
|