IP電話システムの導入について

ネットコミュニケーション研究部門久保田真一郎

はじめに

学内の電話交換機の老朽化が懸念されている時期にあり,当センターが
配備する電話交換機も例外なく老朽化が進んでいる.これらの老朽化した
PBXを置き換える選択肢の中にIP-PBXがある.今回,学内無線LANによる
IP内線電話サービス一部提供と既存PBXのIP化について検討することを
目的に,既存PBX配下にIP-PBXを配置する形態で,IP-PBXを導入した.その
導入について報告する.

システム概要(番号計画)

熊本大学総合情報基盤センターでは,黒髪キャンパスの内線電話をコント
ロールするPBX(以下,黒髪キャンパスPBX)と別にセンターの建物内の内
線電話網を構築するPBX(以下,センターPBX)が存在する.黒髪キャンパ
スPBXの配下にセンターPBXは配置されており,センターでは建物内で利用
される内線番号およびキャンパス内で利用される内線番号の2種類を利用し
ている.今回導入のIP-PBXはキャンパスPBXによって制御される内線番号で
センターPBX経由で制御される4回線(番号をD1,D2,D3,D4とする)を新設し,
その回線を外向き回線とするようIP-PBXを配置した.このIP-PBX配下には
新たな内線網が構築されることになる.

キャンパス内の内線電話からIP-PBX配下の電話への通話は,D1がコールさ
れ,D1が使用中回線の場合,そのコールはD2へ流れ,D2が使用中の場合
D3へ,D3が使用中の場合D4へと順に流れるよう設定されている.IP-PBXと
回線が通じると,IP-PBXが発行する内線番号の入力を求められる.

逆に,IP-PBX配下の電話からキャンパス内の内線電話への通話は,IP-PBX
に対して外向き回線を利用するための指定の信号音をプッシュ後は,キャ
ンパス内の内線電話と同様に利用できる.

IP-PBX配下の内線電話同士であれば,受話器をあげ内線番号を入力するだ
けで通話可能である.

システム概要(システム機能および構成)

前節の通話計画に加え,ネットワーク基盤としての普及の進む無線LAN配下
にて,これらの内線番号が利用できるシステム構築を目指した.エンドユ
ーザが利用する端末として,SIPによる通話を可能とする携帯型端末や
それがソフトウェアとしてPC上で動作するソフトフォンを想定した.その
理由には,これらの端末が近年手軽に購入あるいは導入できることと既存の
内線電話網に対抗して最も評価できる点であると考えたからである.最近で
は無線LAN接続し,携帯型端末上のアプリとしてソフトフォンが動作するも
のも数多く見られるため,ますます利用者が増加するものと予想される.も
ちろん,高価な卓上のIP電話端末も数台導入した.

前節の通話計画を実現するべく導入した機器は,
- SIPテレフォニーサーバ SV8300
- SIP制御装置 SV83 SIP BOX
である.SV8300はNEC社のIP-PBXであり,仕様上は内線として1536回線を収
容できる機能を持つが,今回導入機器はその廉価版であり,128回線収容の
ものを導入した.なお,SIP制御装置は種々のSIP端末とSV8300との呼制御を
橋渡すための装置であり,NEC製品以外のSIP端末を利用する場合に必要と
なる.

電話用無線環境の整備

IP電話用のネットワーク網を整備し,それらのネットワークを学内無線環境
経由で利用できるようセンター内と演習室の一部にあるアクセスポイントの
設定を変更した.これにより無線ネットワーク経由でIP電話を利用できる環
境が整った.

各端末との動作確認

以下の端末(または環境)により動作を確認している.

IP多機能電話 DT700は,PoEにより電源が供給され,ネットワークに接続する
とMACアドレスとユーザ認証により内線番号がふられる.この仕組みの場合,
ネットワークが有線であれ無線であれ利用可能であり,無線ブリッジ機能を
有するアクセスポイントを用いて無線から有線利用することも可能である.
これにより簡易な移動IP電話として利用でき,短期間のオフィスで
利用する内線電話として,また,オフィスの移動に対応できる内線電話とし
て利用可能である.