科目「情報処理概論」の近況報告

ネットコミュニケーション研究部門

久保田真一郎

はじめに

情報分野の基礎的な知識と技能習得を目標とした科目「情報処理概論」を学部
2年生を対象に開講している.この科目は学部1年生を対象とした科目「情報基
礎」の後続科目に位置づけられる.情報処理概論はLMSを用い,各回の学習は
オンラインクイズを中心に行われる.このため,受講者は教員が定めた期間内
であれば,いつでもどこでも学習を行うことができる.この科目の近況につい
て報告する.

科目「情報処理概論」について

この科目は下記学部学科2年生の後期学期に開講され,講義回数が7回の必修科
目となっている.平成21年度の受講者は1077名であり,対面集合型講義で行う
には規模が大きいため,オンラインで実施される.

学習状況について

7回の確認テストと集合型オンライン学期末試験による総合成績で評価して
おり,総合成績は以下の式で決まる.

総合成績 (100%) = 各週確認テストの得点 (30%) + 期末試験の得点 (70%)

確認テストは20問程度の問題プールから1回の受験につき10問ランダムに出題
され,100 点満点で採点される.期末試験では,90%以上の問題が,各週の確
認テストまたはその応用問題として出題される.平成21年度の期末試験結果
と確認テストの平均点との相関係数は 0.7 で,強い相関を示しており,確認
テスト平均点が高得点の学生ほど期末試験にも高得点となる傾向がある.こ
の傾向が示唆することを前提とすると確認テストで高得点をとらせるかが講
義改善のポイントとなる.

平成21年度合格者の学習状況を把握する数値として,LMSへのアクセス回数,
確認テストの延べ受験回数,確認テストの延べ受験時間について調べたところ,
アクセス回数の平均は21.6回,中央値は20回,その分散は82.0,
受験回数の平均は62.3回,中央値は54回,その分散は1175.5,
受験時間の平均は26.1時間,中央値は22.0時間,その分散は342.6であった.
アクセス回数については平均値と中央値に大きな差がなく分散も小さいこと
から合格には20回程度のアクセスが必要と考えられる.このことは7回の講義
回数から考えると,学習のために各コンテンツへ3回程度アクセスする計算と
なる.受験回数は平均と中央値の差が大きく必ずしも合格との関連性はない
ように考えられるが,平均値より中央値が小さいことから合格者は受験回数
が少ない傾向があることが予想でき,これは受験回数を少なく効率的に学習
しているものと考えられる.この傾向は受験時間にもあらわれており,
受験時間の中央値は22時間で,7回の講義回数から考えると講義1回につき
約3時間程度の受験を行っている計算となり,適度な学習時間をとって学習を
進めていると考えられる.

アンケート結果について

この講義で行ったアンケート結果についてまとめる.有効回答数884件であった.

「通常の対面講義と比べて,概論のような講義形態により理解が深まったと思います
か?」という問に対して,「深まった」13.5%,「やや深まった」38.3%,
「同程度」33.6%,「あまり深まらなかった」10.5%,「深まらなかった」4.1%
とオンラインの講義により85.4%の受講者が同程度かそれ以上と感じており,
概ね成功していると考えられる.一方で15%弱の受講者の感じている点について
今後検討する必要がある.

「概論では確認テストの受験によって,この科目へ参加することになります.他の科目
と比べてどうでしたか? 該当する項目をすべて選んで下さい.」という項目では
「(情報分野における)知識が広がった」を選択した受講者は52.8%ともっとも多く,
次に「学習に集中することができた」(28%),「学習時間が伸びた」(25.5%),
「充実感や達成感が得られた」(22.1%)と続く.「(メールでの)質問はためらわれた
」を選択した受講者が17%いた点については,次回より掲示板を設置するなど改善が
必要であると考えている.

まとめ

熊本大学で行われている科目「情報処理概論」について報告を行った.講義として
良い点はこのまま維持し,次期開講時には,より効率的な学習を促す学習活動の導
入や受講者が質問しやすい環境整備などを実施する予定である.