全学向け情報教育の近況報告

メディア情報処理研究部門

右田 雅裕

migita@cc.kumamoto-u.ac.jp

 


1. はじめに

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図1 平成22(2010)年度の「情報基礎A」ホームページ

熊本大学では全1年生を対象に情報分野における基礎的な知識と技能の習得を目標とした教育体制が平成14年度より継続的に実践されています。総合情報基盤センターが主体となり実施されるこの情報基礎演習科目は、全1年生約1800名を対象に「情報基礎AB」として開講されてきました。

本稿では、平成22年度の本学における全学向け情報教育の近況について報告します。

 

2. 情報基礎AB

情報基礎ABは、本学の全1年生を対象にそれぞれ前学期及び後学期に開講される情報基礎演習科目です。情報基礎ABでは、平成15年度前学期よりLMS (Learning Management System)としてWebCTが導入されており、平成20年度の同LMSメジャー・バージョンアップを経て(Blackboard Learning Systemに改称)、テキスト(独自に作成したオンラインコンテンツ)の提示や課題の提出、確認テスト(オンラインテスト)等に活用されています。平成22年度の情報基礎ABに関しても、4月から通年にわたり特に大きな障害もなく演習が実施されました。

平成22年度は、「情報基礎A」が26クラス約1860名の受講者で、「情報基礎B」が26クラス約1870名の受講者で構成され、それぞれ13名の教員(ともに内非常勤3名)が講義を担当しました。

今年度の特記事項としては、4月に発生したヨーロッパでの火山噴火の影響が挙げられます。この影響により、海外出張中であった教員2名の帰国を予定通りに行うことが困難な状況となりましたが、教員間の代講対応で滞りなく講義を実施できました。また、学生が講義で利用するPC実習室におけるPCやそのバックエンドで稼働するサーバ等も含めた、現行の全学計算機システムは今年度が利用最終年度でした。同システムは平成19年度に導入されましたが、今年度もその年度末まで特に大きな障害もなく演習に利用することができました。次年度からは新たな全学計算機システムの運用が開始される予定です。

 

3. 情報基礎ABアンケート結果

情報基礎ABでは各学期末の講義終了時に受講者(学生)へのアンケートをLMS上で実施しています。ここでは平成22年度に実施したアンケート結果の一部を示します。

 

3.1 情報基礎Aのアンケート結果

質問1

フォルダの新規作成、ファイルのコピーとペーストや移動、ファイルやフォルダの削除などの操作を行えますか?

 

a.         自信をもって行える

b.        ある程度は行える

c.         できない

d.        質問の意味が分からない

 

2に質問1の結果を示します。


 

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図4 質問3の結果 (回答数:1592)

質問2

プレゼンテーションソフトウェアを利用して、文章、静止画だけでなく、アニメーションなど動きのあるプレゼンテーション資料を作成できますか?

 

a.         できる

b.        ある程度はできる

c.         できない

 

3に質問2の結果を示します。

 

質問3

Web検索において、AND検索とOR検索を適宜、使い分けることができますか?

 

a.         できる

b.        ある程度はできる

c.         できない

 

4に質問3の結果を示します。

 

 

質問4

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図2 質問1の結果 (回答数:1589)

情報基礎Aでは多くのことを学習してきました。あなたが良かった、面白かった、役に立ったと思える回を3つあげてください。

 

a.         INFOSS情報倫理

b.        電子メール Seemit の利用)

c.         ワードプロセッサ StarSuite Writer

d.        ペイント GIMP

e.         ドロー StarSuite Draw

f.          テキスト ボックス:  
図3 質問2の結果 (回答数:1590)
情報検索

g.         プレゼンテーション(StarSuite Impress

h.        スプレッドシート StarSuite Calc

 

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図5 質問4の結果 (回答数:1591)
5に質問4の結果を示します。図5の縦軸は全回答に対する各選択肢の割合を示します。

 

3.2 情報基礎Bのアンケート結果

質問5

あなたは大学入学以前に(中学校、高校、自宅などで)、 Webページを作成したことがありましたか?「ある」場合は「いつ/どこで」を、「ない」場合は「ない」を選択してください。

 

a.         ない

b.        中学校

c.         高校

d.        中学校と高校

e.         自宅

f.          それ以外

 

6に質問5の結果を示します。

 

質問6

情報基礎B11週で利用したLinuxについてお尋ねします。 Linuxを利用したのは初めてですか?

 

a.         初めて利用した

b.        以前、利用したことがある

c.         ときどき利用している

d.        ほぼ毎日利用している

 

7に質問6の結果を示します。

質問7

情報基礎Bでは、Webページ作成における基礎事項として、 HTMLCSSJavaScriptを学習しました。あなたにとって、難しく感じた学習内容の順番をお教えください。選択肢は、「易しい 難しい」の順に並んでいるものとお考えください。

 

a.         すべて同じくらい難しかった

b.        HTML → CSS → JavaScript

c.         HTML → JavaScript → CSS

d.        CSS → JavaScript → HTML

e.         テキスト ボックス:  
図6 質問5の結果 (回答数:1500)
CSS → HTML → JavaScript

f.          JavaScript → CSS → HTML

g.         JavaScript → HTML → CSS

h.        すべて易しかった

 

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図8 質問7の結果 (回答数:1498)

8に質問7の結果を示します。

 

質問8

Webページ作成の学習であなたがもっと学習してみたいことがあればお聞かせください。複数回答は可能です。

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図7 質問6の結果 (回答数:1495)

a.         HTMLをもっと詳しく

b.        CSSをもっと詳しく

c.         JavaScriptをもっと詳しく

d.        Webデザイン関連について

e.         Webアクセシビリティについて

f.          Webプログラミング

g.         Webにマルチメディア(音声や動画など)をもたせる方法

h.        Webページの公開と関係する著作権や情報倫理について

i.            Webを含むインターネット技術について

j.            特にない

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図9 質問8の結果 (回答数:1498)
9に質問8の結果を示します。図9の縦軸は全回答に対する各選択肢の割合を表します。

 

4. おわりに

今回のアンケートに回答した受講者は高等学校で教科「情報」を履修するようになり主に5年目の世代です。平成20年度のアンケートと比較して、概ね同傾向の結果が得られています。同年度に対して変化が見られるのは、質問4において表計算(スプレッドシート)を「良かった、面白かった、役に立った」とする回答が増加した点で、これは今年度のテキスト(コンテンツ)改修によるものと考えられます。今回の結果も今後の情報基礎ABの講義・コンテンツ改善に役立てていく予定です。