科目「情報処理概論」の近況報告


ネットコミュニケーション研究部門

久保田真一郎


はじめに


 情報分野の基礎的な知識と技能習得を目標とした科目「情報処理概論」を学部2年生を対象に開講している.この科目は学部1年生を対象とした科目「情報基礎」の後続科目に位置づけられる.情報処理概論はLMSを用い,各回の学習はオンラインクイズを中心に行われる.このため,受講者は教員が定めた期間内であれば,いつでもどこでも学習を行うことができる.この科目の近況について報告する.


科目「情報処理概論」について


 この科目は下記学部学科2年生の後期学期に開講され,講義回数が7回の必修科目となっている.平成22年度の受講者は1100名であり,対面集合型講義で行うには規模が大きいため,オンラインで実施される.



質問掲示板の設置について


 昨年度のアンケート結果において,「(メールでの)質問はためらわれた」を選択した受講者が17%いたため,今年度はメールでの質問受付に加えて,掲示板を設置して質問を受け付けた.書き込みを促す工夫として,教員が1件目の書き込みを行い,また,書き込まれた質問に対して4営業日での返事する文言を書くなど行った.教員としては科目内容に関する質問が行われ,質問者に関わらず,他の受講者も理解を深める機会になればと考えていた.


 質問掲示板を設置した結果,20件の質問があり,このうちコース上の誤記などの指摘について3件,コース内のテストが表示されないなどの問い合わせが5件,出席や期末試験,再試験に関する問い合わせが11件あり,このうち5件は再試験に関する問い合わせであった.教員が期待していた科目の内容に関する問い合わせは1件で,教員の期待するものと学生が希望するものとのギャップをあらためて理解させられた.


 今回の結果から考えられることとして,学生は単位修得のゴールを目指しており,それに必要な条件をクリアすることに集中している.学生は条件クリアだけを形式的に求めるようになると,科目内容よりも設定されている答えに関心が向いていると考えられる.このことは,選択肢のどれを選択しても正解となる問題を指摘する受講者がいたことからも推察される.この科目で設定されている確認テストと期末試験により理解度を測定しているが,この学習活動の場合,知的技能を課題に設定していても,繰り返しにより答えを形式的に覚えてしまう言語情報に課題設定されてしまっている可能性がある.次年度へ向けた大きな課題と考えている.

 昨年度のアンケート結果「(メールでの)質問はためらわれた」をうけ,設置した掲示板であったが,その利用者が20件であったことから,他の手段を検討すべきであることもわかった.質問しやすい環境についてあらためで検討が必要である.



アンケート結果について


 情報処理概論はオンラインでの学習を中心に行うため,対面式講義と比べ,対面にて講義に関する相談を受ける機会がない.そこで,例年,アンケートにおいて「概論では確認テストの受験によって,この科目へ参加することになります.他の科目と比べてどうでしたか? 該当する項目をすべて選んで下さい.」という項目を準備し,その回答リストに



を設置している.括弧内の数値は,2010年度のアンケート結果(有効回答数1001件)を示している.昨年より,その割合は減っているが,いまだ抵抗感が存在することが読み取れる.



まとめ


 昨年度アンケート結果を受け,質問を行いやすい環境と考え,質問掲示板を設置したが,思ったほどの効果は見られなかった.今年度のアンケート結果をみても,オンラインであるがための問題点について今後も検討が必要であることが再認識された.